あと2つ書いたら終わりだ と思うと、筆もにぶるな〜・・・
・・・・なーんて言い訳してないで、ちゃんと書きましょうw
町田くんがこの年の Carnival on Ice の演目に選んだのが「白鳥の湖」。
サブタイトルは「ジークフリートとその運命」。
ドン・キホーテでバジルにスポットを当てた彼が
今度は白鳥の湖の王子にスポットを当て、その内面を描き出そうとしました。
この時、パンフレットに作品の説明が載ってしまっていたんですよね。
披露前に購入してページを開いた人は、演技を見る前にタイトルを知ってしまった。説明も書いてあった。
これまでになかったことなので、
「見たくなかった!」「なぜあらかじめ!?」などと戸惑ったファンも多かったようですが
まぁ、事前に読んでおいて欲しかったのかもしれませんね、珍しく。
さあ、町田くんの番になりました。
音楽が鳴り、真っ暗なリンクに一筋のスポットが当たるも、誰もいない。
でもそれくらいでは、町田作品を見て来た観客は驚きません。
「ハイそれで?」という感じw
誰も現れずに、いったんスポットライトが消えました(笑)
その後現れたマチダタツキは!!!
白タイツ!!!
もーーー、これに衝撃を受けた人の、なんと多かったことか。
私は今でも、この時のことを書いたクロミミさんのブログのイラストを思い出します(笑)
(ごめんねクロミミさん、勝手に使って。
クロミミさんのブログ記事はこちら ↓
https://ameblo.jp/kuromimi7/entry-12317924750.html )
さらによく見ると、靴まで白い! 白いブーツカバーではなくて白いスケート靴!!
衣装のインパクトで、現地さんは最初 平常心で見られなかったかもしれないけど、
この作品は最初から最後まで、クラシックバレエを踏襲した本当に美しい作品でした。
私は・・・こうしていろいろ書きながら振り返ってみると
この「Swan Lake」が一番好きかもしれない。
今回はストーリーもバレエに忠実で、
バレエで使われる言語であるサイン的動きなども取り入れていました。
バレエの「白鳥の湖」はオデットが主役、王子はそれに付随したような役どころです。
フィギュアスケートでも、男子がプログラムに使うことはよくありますが
その人間性まで表現したプログラムはあまりなかったのでは?
音楽に合わせて演技はしますが、どんなキャラクターかはいまいちはっきりしない。
ドンキのバジルや、カルメンのホセ、ロミジュリのロミオなんかは、どんなキャラクターか表現しやすいですけどね。
(ちなみに町田くんが現役時代に滑った時に表していたのは、王子じゃなくて「白鳥」でしたよね ^ ^; )
町田くんはそんな、これまでぼんやりしていたジークフリート王子というキャラクターを、
彼なりの解釈で美しく強く立ち上げてみせたと思います。
町田くんは公式サイトの解説の中で、
「独り舞台の形式で物語を展開させるべく、振付にマイムや演劇的な身振りを取り入れています。」と言っていますね。
また、「これは『舞踊劇』である」とも書いています。
ストーリーがしっかりあって、演技的な表現が必要とされる、演劇的要素が強い作品でした。
町田くん本人は、ジークフリートを演じていましたが
氷面を湖に見立て、そこにはいないオデットやロットバルトの存在まで表して
白鳥の湖の世界を一人で創り上げてみせたんですよ。
すごい演技力というか、踊りの表現力というか。感心しました。
また舞台照明のように照明も贅沢に使用しました。
ロットバルトの強大な力を表現した真っ赤なライトは、圧巻でしたね。
こんな作品に、演劇好きな私がハマらないわけがない(笑)
また公式サイトでは、
ヌレエフ、ノイマイヤー、マッツ・エック、マシュー・ボーンという大ダンサー・大振付家の名前を挙げ
ジークフリートを中心としたという意味で、「彼らに連なる系譜」として
自らの今回の作品を位置づけています。
いや〜、志がでかいね!!!
それだけ誇りと自信を持った作品なのだと思います。
思うに、
一度とことんまで、大好きなバレエ作品を氷の上で作り上げるということを、してみたかったんじゃないのかな。
この年はクラシックバレエの年だったもの。
PIWのオープニング、CaOIのエンディングでの衣装と演技は「海賊」。
そしてこの どクラシックバレエの2作品。
・・・私はこの年の作品群こそ、ミルズ先生に見てもらいたかったですね。できればナマで。
それにしても、この大作が1度きりというのは本当に惜しいと思います。
照明もすばらしかった。たった一回のためだけの照明。
そしてたった一度だけの演技。
どんな気持ちで臨んだのでしょうねぇ。
「Ave Maria」くらいの作品なら、心穏やかにのぞめるような気もするんですけど
これだけの大作を、たった一回でミスなく演じきらなくてはならない。
自分も、照明も、音響も、なにもかも。
すごい心臓だよなぁ・・・。
オリンピックに出るほどの人だから、この一回に賭ける、みたいな経験もしているから、できるのかなぁ。
(照明さんなんかすごい緊張感だったんじゃないかしらw 余計なお世話だけど)
しかし、この作品での、リンクや客席の劇場としての使い方、照明の使い方などが
次のボレロへの足掛かりにも、完成させられる自信にもなったのではないかと思います。
この年のバレエ作品群を見て
もうクラシックバレエの作品はやらないな、と私は思いました。
だってこれ以上何をやると言うんだろう。やりきったよね、クラシックは。
来年はきっと・・・・コンテンポラリーに行くな。
と、なんとなく思いました。(それが何かまではわからなかったけど)
それにしても、一度だけなのが本当に惜しい大作でした。
私は個人的に、第九に次ぐ傑作だと思っています。
早く手にしたい、ステキ表紙の「町田樹の世界」♪